難病やその他病気との共生

自分の人生は自分で切り拓いていくもの-李さん(第一回)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

元をたどると、私と同じ中学&高校に通っており、10代のころから交流がある李さん。
学生時代から精力的に様々な活動に取り組み、大学在学中からベンチャーの起業にチャレンジしたというパワフルな方ですが、ある日ガンが判明し、キャリアに関する考え方にも変化があったとのこと。

治療も一通り落ち着いたと伺い、早速インタビューの機会をいただきました。
全三回でお送りします!


今日は、大変な中でインタビューを受けてくださり、ありがとうございます!
まずは自己紹介をお願いします。


李禎み(リ ヨシミ)と申します。
中国の東北地方にいる朝鮮族の家庭に生まれ、両親に連れられて2歳半で来日し、茨城と東京で育ちました。現在は28歳です。
よく、日中韓の3ヶ国語を全て話せるのかと聞かれますが、残念ながら韓国語はもう忘れてしまいました。
2017年に東京大学経済学部を卒業しまして、そのまま大企業への就職はせず、AR(拡張現実)技術を用いてソフトウェア開発を行うプレティア・テクノロジーズ株式会社に、共同創業者として参画しました。
2021年の頭、27歳の誕生日当日にステージⅢの舌がんの告知を受けたことをきっかけに人生観が変わり、2021年末に、プレティアは退職しています。
キャリアの次のステップについては、現在療養しながらゆっくりと考えているところです。


大学在学中からスタートアップを共同創業したということですが、当時、キャリアについてはどのように考えていたのでしょうか?


実は、卒業後の進路について真剣に考え始めたタイミングでは、起業はおろか、スタートアップというものにも全く興味がありませんでした。
むしろ、経済学の勉強を続けて、ゆくゆくは国際機関のエコノミストとして働きたいという思いがあったので、社会人経験を挟むにしても、最短で海外の大学院進学が可能になる道を模索していました。
例えば、外資系金融やコンサルティング会社に入り、お金を貯めてから数年後に大学院進学をする、という道ですね。


確かに、外資系金融やコンサルティング企業のインターンシップにも参加したという話を聞いた記憶があります!
では、スタートアップに関心を持ち始めたのはどのようなきっかけだったのでしょうか?


就職活動を通して様々な方とお会いさせて頂く中で、明確なビジョンを持って日夜奮闘しているスタートアップの人たちと一緒にいるときが、一番楽しくてワクワクすると感じたのがきっかけです。
国際機関のエコノミストを目指していたのも、単純に、「どこの地域で生まれようが、どういうバックグラウンドで生まれようが、みんなが等しく努力をした分、豊かな生活が送れる社会をつくりたい」という思いからで、まさにそういった思いを持って、起業・スタートアップに挑戦している人たちが沢山いるんだということを知ってから、その道に惹かれるようになりました。
より良い生活環境を求めて、自らの意思で海を渡ってきた両親の影響だと思いますが、幼い頃から、「自分の人生は自分で切り拓いていくもの」という考えを強く持っていたので、所謂“エリートコース”に乗ることに対する執着や憧れは、全然ありませんでしたね。むしろ、泥臭いスタートアップの世界のほうが、自分に合っていると感じるようになったんです。


それは素晴らしい考え方ですね!確かに、スタートアップの世界で頑張っている方の中には、自身の想いの実現を目指している方も多い印象があります。
実際に仕事をしている中で、キャリアに対する考え方に変化はありましたか?


キャリアに対する考え方自体は、そこまで変わっていないかもしれません。
今も昔も、「キャリアは自分で作っていくもの」という考えが強いです。
キャリアアップにも、「30歳手前でMBA留学をする」とか、「○○業界で経験を積んだ後にxx業界に移る」といった定石のようなものが存在するかと思いますが、それらを愚直に実行するスタイルは自分には合っていなくって(笑)
キャリア構築に関しては昔から一貫して、「自分らしさ」を大切にしている気がします。 ただ、変化をひとつあげるとしたら、前代未聞の問題が日夜ふりかかってくるスタートアップという環境にいる中で、豊富な経験と深い愛情を持って自分を導いてくれる大人の存在の重要性は、昔よりも強く感じるようになりましたね。所謂“メンター”の存在ですね。
大学を卒業したばかりの頃は、血気盛んで、「周りに大人がいなくても、頑張ればなんでも出来るでしょ」と思い込んでいましたが(笑)、今はどちらかというと、「自分ひとりでできることは限られている」という考えの方が支配的です。
それはキャリア構築についても同様で、「自分の手で作っていくもの」という根本的な考え自体は変わらずとも、「導いてくれる存在がいるほうが、より遠く、面白いところに行ける」と考えています。


メンターの重要性ですか!
導かれた結果、実際に、ご自身の成長を強く感じたのはどんな時でしょうか?


以前よりも、ネガティブな感情との付き合い方が上手になったことを実感したときですかね?(笑)
昔だったらあからさまにイライラした態度を取ってしまっていたような場面で、落ち着いて和やかに対応をしている自分に気がついたときに、「人として凄い成長したな」と、素直に思いました。
「提案資料の作成時間が半減した」とか、そういう分かりやすい話じゃなくて恐縮なんですけど(笑)


ソフトスキルの話がパッと出てくるのは、日々変化が大きいスタートアップを経験された李さんならではの重要な視点かもしれませんね!


はい、私にとっては、ハードスキルよりもソフトスキルの向上のほうが成長実感に繋がるんです。
というのも、ビジネスって結局、信頼関係の積み重ねの上で成り立つものでしかないと思うんです。
で、その信頼関係構築には、ハードスキルよりもソフトスキルの方が重要になってくる。
自分の言動のひとつひとつが、眼の前の相手にどのような影響を与えるかをしっかり考えられる人こそが、ビジネスの現場で長期間活躍できると思っています。
自分の周囲を見渡しても、20代のうちは特に、ハードスキルの向上に心血を注いでいる人が多いと感じていますが、今のうちからソフトスキルの重要性に気がつけたことは、スタートアップの荒波に揉まれてきたからこそ、と言えるかもしれません。(笑)

20代にしてここまで成熟した考え方を持っている李さんはさすがだなあ、と感じるインタビューでした。
第二回では、そのように順調にキャリアを歩んでいる中で舌がんが発覚してからのお話を伺っていきます

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

コメント

コメントを残す

*