難病やその他病気との共生

「有難う」を言葉にする心の余裕-李さん(第三回)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

第一回では、これまでのキャリアに関する考え方について
第二回では、舌がんが発覚してからの行動について、伺いました。
第三回では、治療を終えた「今」の考え方について伺っていきます!


治療を一通り終えた後、一度元の仕事に復職したとのことですが、その理由を教えてください。


正直にお伝えすると、治療費でかなりの額がかかり、金銭的に余裕がなかったのと、キャリアで後れをとることが怖かったからです。
超選択的動注化学療法自体は保険適用なのですが、コロナ禍を懸念して個室入院を行ったのと、抗がん剤を使用する関係で事前に保険適用外の妊孕性温存治療を行っていたので、結局かなりの出費がありました。
有難いことに、両親からの金銭的な援助は貰えましたが、そこまで裕福な家庭でもないので、なるべく早く返してあげたいという思いが強かったです。
また、20代後半のまだまだ働き盛りとされる時期に、半年以上仕事から離れることで、主に能力開発の観点から、後の自分のキャリアに悪影響が出てしまうのではないかと焦っていました。
7月末時点では、体力自体は、1日中外出をしても問題がない程度まで回復していたので、復職しない理由がないと考えました。
が、今思えば、復職のタイミングが早すぎましたね(笑) 結局、そのような、どちらかというと後ろ向きな気持ちで復職をしたところで、周囲にとっても自分にとってもあまり良い影響はありませんから。
仕事は楽しんでこそです。体力だけでなく、心の準備ができるのをしっかり待つべきだったなと思っています。


焦る気持ち、ものすごく共感します……。
今後はどのような生活を送っていこうと考えているんですか?


実は、病気をきっかけに、自分の人生における仕事の位置づけを見直したく、昨年末で会社を退職しました。
がんは、治療後5年間、再発・転移なしで過ごさないことには完治したとはいえない病気なので、とりあえず32歳の春までは、再発・転移から逃げ切ることが自分にとっての至上命題です!!
スタートアップで奮闘した5年間は、間違いなくかけがえのない青春ですが、何度も心と身体にムチを打っていました(笑) ストレスはがんにとって一番の栄養になってしまうので、暫くは、肉体的にも精神的にも、高負荷のかかる環境からは距離を置きたいなと思っています。
元々は、「がんになったのに、もうバリバリ大活躍しているよ!」と、世間をあっと言わせる自分の姿を思い描いていたのですがね(笑) 身体だけでなく、心の健康の重要性も理解した今となっては、ビジネスの最前線に戻るのは、完治してからでも遅くないかも、と、のんびり構えています。
今年に入ってからはとにかく、3食きちんと自炊をして栄養バランスの取れた食生活を送り、適度な運動と十分な睡眠を最優先として、日々を過ごしています。


何をするにも、心身ともに健康だと感じられるのが一番ですもんね!
今後の人生において、特に大事にしていきたいことなどはありますでしょうか?


周囲への感謝の気持ちです。
今回、私が無事に治療を終えて、再度人生の駒を進められるようになったのは、周囲の方々から愛情とサポートを頂いたからに他なりません。
大げさに聞こえるかもしれませんが、闘病を通して、自分の命は、これまでの人生で関わった全ての人たちによって生かされているものだと強く感じるようになりました。 ご縁のあった全ての人への感謝の気持ちと、然るべきタイミングで「有難う」ときちんと言葉にする心の余裕だけは、どんなときでも持ち続けたいと思っています。
むしろ、それらを失ってまで取り組むべき価値のある仕事などは、存在しないと思っています。
特に、献身的に闘病を支えてくれた家族や友人には、 命拾いをした残りの人生を通して、恩返しに努めたいです。
彼らの身になにか困ったことがあったときに、一番に救いの手を差し伸べられるような存在になることが、私の今後の人生の指針です。


心が洗われる、素晴らしい考え方ですね!!私も見習わなければ。
がんが発覚した方や、難病患者の方、その他、何か悩みを抱えている方に伝えたいメッセージはありますか?


自分の人生の責任を取れるのは自分だけです。
幸せな人生というのも、誰かに与えられるものではなく、自分自身で形作っていくものだと思います。
この考えを根底に持っている方であれば、恐らく人生のどんな難局も、後から振り返ったときに、「好転のきっかけだった」と思える形で、乗り切ることができると思います。
一度きりの人生、自分らしく輝き続けましょう!

ありがとうございました!

これまでもキャリアの話で盛り上がることの多かった李さんと、まさか病気について話す日がくるとは、と共通点の多さに驚きつつ、「私も周りへの感謝を忘れてはいけないな」と感じる学びの多いインタビューでした。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

コメントを残す

*