障害との共生

あたたかな空間で日々を丁寧に生きてゆきたい-山下さん(第二回)

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第一回では、耳が聞こえないことによる難しさやそれに対する工夫、さらに考え方の変化について伺いました。
第二回では、スウェーデンにおいて学んだことや、今後やりたいことについて、深く伺っていきます!


大学でも専門の勉強をされたとのことですが、改めて、どのような専攻だったのか教えてください!


大学では、特別支援教育を専攻していました。特別支援教育というのは、発達障害や聴覚障害、肢体不自由など、様々な障害を有する子どもたちへの教育のことです。その中でも、まずは聴覚障害について深く学びました。
その後、さらに専門的な勉強をする研究室については、視覚障害を専門に扱うところに入り、卒業論文は視覚障害と聴覚障害を併せ持つ「盲ろう」に関するものを書きました。
ちなみに、幼稚園、小学校、特別支援学校の教員免許も取得しました。


スウェーデンへの留学は、何がきっかけだったのでしょうか?


留学に行くきっかけはいくつかあったのですが、特に大きかったのは「ゆっくりとした時間の中で暮らしたい」と思ったからです。田舎から上京してからというもの、常に様々なものに追われていました。そんな生活から抜け出したいと思い、ゆっくりとした時間が流れる北欧に行きたいと思うようになりました。
また、特別支援教育を学んでいる中で、教育と福祉が充実しているという面から「スウェーデン」というキーワードをよく聞くことがあったため興味がありました。


確かに、北欧と言えば教育と福祉が充実しているイメージが強いです。


あとは、私が育った地元がとても田舎だったため、「家事や育児は女性が行うもの」「女性は大人になっても親の近くにいるのが良い」という考え方がまだ根強く残っていたんです。そうした環境の中で育っていたので、「男女平等」という考え方にもとても興味がありました。
LGBTQの友人も多くいるため、ジェンダーという観点でも多様な形のある北欧にさらに興味がわいたという形です。


実際に暮らしてみて、北欧について特に惹かれたポイントを教えてください。


たくさんありすぎて絞れないのですが、特に「教育」、「男女平等」、「働き方」、「時間の流れ方」が印象に残っています。
まず「教育」ですが、スウェーデンでは大学まで授業料が無料なのが素晴らしいなと感じます。授業料を気にせずに興味のあることを学べるという環境が魅力的です。また、何度でも何歳でも大学に入ることができるので、私の友達のお母さんはもう60代ぐらいの年齢ですが、陶芸を学びに大学に通っていました。


60代でも大学に通いなおせるというのは魅力的ですね!人生が豊かになりそうです。
2つ目は、「男女平等」ですかね?


はい!スウェーデンでは家事や育児を女性だけでなく男性も行うのが当たり前なんです。育児休暇の取得率も男女ともにとても高いですし。
私が留学中にスウェーデン人の友達とお家でご飯を作った時には、スウェーデン人の男の子たちが主体となってご飯を作ってくれました。それに驚き感動したので、その男の子たちを褒めたのですが、「当たり前のことだよ」と笑っていました。


家事や育児を平等に分担しているのは良い文化ですよね!「働き方」についてはいかがでしょう?


「働き方」については、一般的なオフィスだけでなく、スーパーや洋服屋さんなども日本に比べて労働時間が短いなーという印象です。ただ、あまり働かないというわけではなく、決められた時間の中でしっかり効率的に働くというような感じです。
土日に買い物に行こうと思ったら平日より営業時間が短かったり、お店が閉まっていることも多々ありましたが、時間をしっかり把握していれば特に困りませんし、そのような働き方であるからこそ、仕事以外に自分の余暇の時間が取れたり、家族や友人と過ごす時間も取れるのだと思います。
また教育とも繋がってきますが、スウェーデンでは働きながら大学に通っている人もとても多いんです。私の友達は、エンジニアとして働きながら「日本語学科」に通っていました。学びたいと思った時に学びたいものを学べるシステムや周りの理解があることはとても素晴らしいと思いました。


大学が本当に身近なものなんですね。確かに、北欧はプライベートも重視した生活を送っているイメージが強いです。
最後は、「時間の流れ方」ですね!


日本に帰ってきて特に感じるのは、「スウェーデンでの時間の流れ方が素敵だったなぁ」ということなんです。
家族や友人とお家でご飯を作ったり、森にベリーを摘みに行ったり、Fika(カフェで家族や友人などとお話しする文化)をして対話をしたり、本当に時間の流れがゆったりしてるんです。
時間の流れ方がゆっくりしているとともに、生活の中に「余白」があったので、「私は何が好きかな?どんなことをしたいかな?」と自分と対話する機会も多くありました。
北欧についての魅力はもっと語れるのですが、このへんにしておきますね(笑)


ありがとうございます!(笑)
では、そのような経験も踏まえて、現在の仕事に就いたきっかけはどのようなものなんでしょうか?


スウェーデンには大学への交換留学として1年間行き、教育を主に学んだのですが、それと同時並行で課外活動もしていたんです。
「盲ろう児・者への教育と福祉」というテーマで、スウェーデン各地の盲ろう関係の福祉施設や盲ろう児が在籍する学校でフィールドワークをするというものです。
日本やアジアなどで盲ろう者として第一線で活躍していらっしゃる方がこの活動を知り、私を今の職場に繋げてくださいました。


スウェーデンでの課外活動が今の仕事に本当に直結しているんですね!
もっと長期で見た時に、将来は、どのような生活を送っていきたいと考えていますか?


今24歳なのですが、27歳までに北欧に戻って働きたいと考えています。
北欧に住む方法はたくさんあると思うのですが、私が大事にしたいこととして「自分の足でしっかりそこに立ちたい」という気持ちがあります。なので、北欧で仕事を見つけて働き、地に足をつけて生きていきたいです。
特にこの仕事をしたいというものは決まっていないのですが、人と関わったり対話をすることが好きなので、そのような仕事ができたらなーと思います。
また、和の文化にも関心が強く、今は着付け教室や茶道のお稽古に通っており、これから和菓子教室にも通う予定なんです。なので、これらの文化を北欧にも持っていきたいな、とも考えています。素敵な和の文化の型も大事ですが、型に囚われすぎずにいろんな方に楽しんでもらえるような活動をできたら嬉しいです。
何か大きなことを成し遂げたいというよりかは、あたたかな空間で日々を丁寧に生き、幸せを幸せと思える心を大切にしながら生きていきたいです。

ありがとうございました!
北欧での考え方や文化に触れ、将来的には北欧での生活も考えている山下さん。
「人生における幸せ」を改めて考えるきっかけになるインタビューでした。

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